吉報

 先輩が結婚した。

 

 業務中、届いた書類のチェックをしていると懐かしい名前を見つけた。

ーーあ。もう二年前になるのか。

 はじめ複数人で焼肉に行き、そのあと個別で誘われて一度だけご飯に行った。その日にイルミネーションの下でプレゼントを渡され、お見合い番組さながら手を差し出された。当時本当に嫌で、どう断ったものかととても困った覚えがある。

 へぇ。結婚したんだ。おめでとうございます。素直な気持ちが呟きとなって溢れる。

 すごく結婚したがっていたよなぁ。思い返すと当時も展開が早かった。初めて二人でご飯に行った席でたしか、一緒に暮らして猫を飼いたい話をされた。着物が趣味なんだよね、祖母が着物たくさん持ってるから、着てくれたら祖母もきっと喜ぶよ、などと中々の宇宙語を話していた。

 面倒くさがって返事を先延ばしにしていたら、突然LINEが来た。

「返事、もしもらえるなら早い方がいいかな。OKなら来月の誕生日はディズニーで一緒にお祝いしたいから、早く飛行機を取っちゃいたいんだ。で、いつもらえる?」

これで、はっきりと断る決心がついて次の日には返事をした。とにかく自分の中で勝手に妄想を展開している人だった。

 それほどの行動力があれば、(相手の意向を伺わずに展開を進めることを行動力というのならば、だが)いざする時は早いだろうと思っていた。二年経たずにめでたくゴールインしたわけだ。

 ただいま、今日もおつかれ、そんな会話を愛しい誰かとしている先輩を想像して祈るように合掌をする。どうか先輩が猫を飼えていますように。相手が猫アレルギーでありませんように。

 


 なぜだか1990年前後の人によく好かれる。ありがたいことのように思えるが、出会ってから好くまでの期間が短すぎて、私に幻想を抱いているパターンが多い。大抵は愛想をよくしている穏やかな私を見て好意を抱き、短気で素行の悪い私を知ると幻滅する。全然ありがたくない。

 ちょうど周りが結婚続きで、自身も結婚したいタイミングなんだろう。結婚したいところにぽっと出てきた年下の女の子。30くらいの先輩方は勝手に私に夢中になって、今ではそれぞれ新しい相手を見つけている。よかったですね、次に行けて。どうか幸せになりますように。

 冒頭で挙げた先輩の同期たちの間で結婚ラッシュのようで、最近彼女ができた別の先輩はこのビッグウェーブに乗るしかないと笑っていっていた。今度はずっと穏やかな人なんだと。いい報告待っています。結婚したい人たちは次々と切り替えて結婚のために動くしかないのだ。ちなみに過去の女みたいな物言いは事実に則していないのでやめてほしい。

 最近韓国人の元恋人に新しい恋人ができたようだ。別れてしばらくはFacebookで恨み言のような投稿を定期的にしていたが、最近は惚気一色である。幸せになれてよかったね。1990年生まれの元恋人のチュープリを見るのは正直キツいものがあるが、本人が幸せならよかろう。いつまでも子どもでいたい人だったのをふと思い出した。