親知らず

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一年前の話です。

 

知らない間に生えてきた親知らず。怖いから歯医者には行かなかった。

 

そうして放置した結果、気づいたときには親知らずだけ虫歯になってしまって、親知らずを抜くしかなくなった。


歯医者に行きたくなかったのは実は怖いからではなく、面倒くさかったから、そしてお金をかけたくなかったから。
持病の関係で、経過がいいときじゃないと抜いたあと重症化するといわれ主治医からのドクターストップ状態だったのもある。持病を管理していい状態を維持するのは難しかった。

しかしいよいよ抜かないといけなくなって、状態もちょうど安定していたので仕方なく歯科口腔外科に行った。


「虫歯になっている上の親知らずは生えきっているので、すぽーんと抜けますよ。ただまあ、下の親知らずは歯茎が被さっていて、手術になるので急がなくてもいいんじゃない。」「じゃあ上だけ先に抜いちゃって、下はいつかの長期休みにします。」

お医者さんは言った。トントン拍子で抜歯の日取りが決まる。右上の歯は7/1。抜いてみていけそうなら左上もそのまま抜いてしまうという予定だ。

 

7/1午後、有給を取って抜きに行った。
予約は2時半からだったので昼から映画を一本見れた。遠距離の恋人と通話をつないで同時視聴。なんて最高な昼下がりなんだろう。
優雅な気持ちで病院に向かう。うそ、本当はビビりまくりだった。麻酔してもどのくらい痛いんだろう。


抜歯は案外すんなりいいった。麻酔を入れても5分くらいではないか。実際に抜いたのは3分くらいだったと思う。
それでも、どうやら抜くのに手こずっていたらしく、本来なら2分とかからないらしい。え?そんな感じ?

「手こずったから左はまたにしようか」
結局その日は一本しか抜かなかった。

 

そして7/9。左上の親知らずを抜く。
前回はビビったけど今回はビビらなくていい。だって既にどんな感じか知っているのだ。
余裕な気持ちで挑む。麻酔をして、すぐ抜歯が始まる。
「痛い?」「痛くないです」「これは?」「らいじょうぶれす」「よし」

「?!ま、まってくだ、めっちゃいた…っ」
ありえん痛い。おかしい。私は前回を知っているのに。


「あー骨くっついてるわ」
!?
「麻酔追加しますね」
なんだかわからんが手こずっている。既に前回の時間をゆうに超えている。
「でっかいなあ」
メキメキメキ
いや、そんな感じ!?そんなテンション?!めっちゃ痛いが!!?

不安と動揺でお医者さんへ矛先が向かう。そんな呑気な口調でやめてよ?!

 

「はい取れました。」

お医者さんの手袋は血まみれ、その手の中には親指第一関節ほどの血の塊があった。

歯と骨がくっついていたので、一部の骨を切除して一緒にとったという。なかなかでかい。
それに伴って鼻とその横の空洞と骨のあった場所がすべて繋がってしまった。思い切り吸えば、♪ちゃらり〜鼻から牛乳〜状態になってしまうわけだ。そんなことある?

 

抜歯には結局20分以上かかっていた。
痛すぎて泣いた。歯を抜くときも泣いたし、抜いたあと3時間後くらいに麻酔が切れたときも痛すぎて泣いた。なんなら痛すぎて吐き気を催した。聞いてないよ。前回と全然違うじゃん。

 

右上のときは痛い痛い固形物食べれないと言いながらなんだかんだゆっくりなら左側で噛めたので、想像していたよりも普通に食べることができた。
しかし今回は、覚悟するほかあるまい。しばらくはヨーグルトと豆腐、長芋にお世話になることにする。

 

そして別日に縫合した傷口の抜糸を行う。傷口はふさがって穴も埋まってきているだろうとのこと。

チャットモンチーの”親知らず”、ぜひ聞いてください。冒頭はここからサンプリングしてます。

親知らずは4本中2本抜けた。私はこれで半分"親知り"になったのだろうか。親には大学を卒業してようやく反抗期が終わったねと言われた。私は高校でとっくに終えたつもりだったが、大学のときが特に酷かったと親は言う。心当たりがないではない。でももう安心してほしい。半親知らずなのだ。

 

切除した際に鼻とつながってしまった穴に関して、後日談がある。

穴に溜まった食物がおそらく腐食し(?)恐ろしい異臭を放ったのだ。しかもその穴は鼻へとつながっており、気を抜くととんでもない臭いを感知する。腐ったどぶのにおい。いつかの夏の日の韓国旅行、雨が降った後の沼から発していた異臭を思い出した。その強烈な臭いが鼻を掠めるとゲロ必至。

穴が塞がったあともそれがしばらく続いて、半月経つ頃には異臭との付き合い方も覚えていた。異臭慣れ。もうあんな思いはしたくない。

 

※noteに掲載していたものを加筆修正しました。